日本の非対称と奈良



同じ湘南の地で友人の新築邸宅の披露会があって招かれました。

素晴らしい邸宅だったのですが特に好ましいと思ったのが建物のバランス、二階部分。

正面から見て左右対称でなく非対称の美がそこにはありました。

西洋建築、いや大陸建築というものはベルサイユにしろ、ベルベデーレにしろ、シェーンブルンにしろ、アヤソフィアにしろ左右対称が基本。

中国の都もイスラムのモスクもそうです。

日本でも藤原京、平城京に平安京しかり。

しかしながら良く見てみると実は日本には非対称の美を尊ぶ構造もあるように思えます。

あの法隆寺。

中門の柱を軸に左に五重塔、右手に金堂と絶妙の空間を醸し出しています。

時代が下って、法隆寺の棟梁の系譜で構築した大坂城の天守閣も東側に付属隅櫓があって非対称の塔となっています。(江戸城や名古屋城の天守は左右対称ですが)

又、京都の三閣でも、金閣、銀閣と左右対称が続きましたが、最後の飛雲閣は左右非対称となりました。

さて奈良に戻りますと、総国分寺である東大寺もわざわざ山の斜面にこしらえており、非対称の配置。

東西七重塔は確かに南大門の両側に左右対称の構図です。

しかしながらあの高低差では、100mの高さの塔がそもそも左右対称でなかったと思いますし、伽藍は二月堂、法華堂と正面に向かって右側(つまり東側)に位置し、西に向って展開しています。

左右対称の唐の文化の影響とは全く別の日本の独自性がここにはあります。

そもそも平城京も一見、左右対称の構造が基本ですが実は東側に大きな外郭部としての外京がある構造です。

その外側の外京に東大寺、興福寺、元興寺とメインの大寺が位置し、今日の古都奈良の中心部になっています。

平安京も当初は左右対称でしたが、右京が廃れ、左京中心に発展しました。

見渡す限りの平野と違って、起伏のある緑豊かな日本では独特の空間感があり、左右対称と非対称を絶妙に組み合わせる文化が出来上がったのかもしれません。

写真は一見左右対称に見える東大寺伽藍と平城遷都1300年記念事業協会資料より。

二月堂、法華堂はこの右側の春日山斜面に配置されており全体として左右非対称になっています。

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