景観と俯瞰景

①元旦の日の大仏殿夕景、知足院裏からの俯瞰景で遠くに興福寺五重塔

②二月堂からの東大寺伽藍、旧市街俯瞰景

③平城宮跡からの旧市街眺望。
大極殿復元の暁にはさらに素晴らしい景観になろうかと期待できます。

④登大路の裁判所前に位置する森精機さん迎賓館。近代建築ですが和風外観でいかにも奈良の表通りに相応しい風格です。Global企業であるだけに奈良の景観がどうあるべきか、よく理解された上での設計となっています。


⑤高畑御所馬場周辺からの五重塔遠望。さりげない日常生活の景色に五重塔の甍が見えるのが奈良に住んでいて気持ちのいいところでしょうか。



最近、景観法に基づく景観計画を各自治体で策定する動きが活発化しています。
街並みが醜いのが当たり前という日本の都市景観もやっと見直しの機運になってきました。

近江八幡市、小田原市が制定している他、京都市では建造物の高さ45m→30m以下にするとの条例を制定しています。

奈良市でも景観計画について市から昨年年末に素案が提出されています。


さて景観においては眺望は非常に重要なポイントです。

奈良市景観計画でも薬師寺大池からの若草山、東大寺の眺望、或いは平城宮跡地からの眺望を重視し、奈良市にとっての独自価値として保全していくべき、との考えが示されています。

眺望を重視すべき視点としては、奈良の場合、
①観光客の視点
②地域住民の視点

があると思われます。

① の観光客の視点ですと、その多くが訪れる東大寺伽藍、興福寺伽藍、奈良町周辺からの眺望も極めて重要でしょう。

今後、奈良観光リピーターになるかどうかの心象の決め手でさえあります。

②の日常生活の中でさりげなく見える堂塔の景色が奈良ならではの魅力であり、市民にとっては既得権である以上になぜ奈良に住んでいるのかというそもそもの本源的価値です。

眺望ポイントとしては、以下のポイントも素晴らしく、見上げるビューと見下ろすビューの両方について今後の保全が望ましいと思います。


見上げるビュー

・ 猿沢池縁淵、猿沢池以南からの興福寺五重塔景観

・ 一条通り周辺・きたまちからの大仏殿・若草山景観

・ 高畑周辺からの若草山・春日山・高円山景観

・ 登大路からの若草山・春日山

・ 平城宮跡からの旧市街景観

・ 西ノ京からの旧市街景観

・ 山村御殿周辺からの旧市街景観

見下ろすビュー

・ 若草山からの奈良市全域を見下ろす景観
・ 東大寺二月堂からの景観
・ 旧多聞山城跡地からの東大寺景観、興福寺景観
・ 般若寺周辺の奈良坂からの東大寺、興福寺遠望景観
・ 知足院周辺からの大仏殿、興福寺五重塔景観
・ 高畑福井町・柳生街道からの西方景観
・ 奈良町、薬師堂周辺からの西方景観

後者の見下ろすビューは俯瞰景とも呼ばれ、都市の景観印象の決め手となっている場合も多々あります。


プラハのプラハ城からの旧市街を見下ろす景観、ウィーンのベルベデーレ宮殿から見下ろす町の景観、或いはフィレンツェのミケランジェロ広場からの見下ろす景観、いずれも絵葉書となり、観光ガイドブックの表紙となる景観があって都市景観のアイデンティティそのものです。
奈良は美観景観を形成するポイントがこれだけ沢山あるのでそれぞれ、どのように景観保全し、観光都市としてブランド価値化していくか、重要でしょう。

芦原義信著「街並みの美学」によりますと視覚構造上、俯角10度あたりで景観を 遮断物なく見下ろせることが景観として優れたものになる条件だそうです。

具体的事例として函館山からの函館港の景観を取り上げています。

他方、悪い景観の事例として横浜の港が見える丘を上げ、俯角10度で遮断する建物が多いとの分析となっています。(ページ136)

奈良でも二月堂、若草山の一合目中腹あたりからの景観を観光客訪問頻度が高い重要視点ポイントとして「見下ろす眺望景観」として位置づけるべきでしょう。

そしてこの「見下ろす眺望景観」としての俯角10度程度での俯瞰景で遮断物が存在しないよう高さ制限を行うことが極めて重要と思われます。

写真は正月に撮影した奈良の景観写真です。

コメント

匿名 さんのコメント…
おはようございます、tetsudaです。年末は、とても楽しかったですね。皆の方向性が一致していたので、展望が開けてきました。また集まりましょう。

東大寺周辺の風景、良いですね、心が静まります。景観に関するご意見も、細部までよく検討されていて、素晴らしいと思います。

奈良市も百年の計として、立派な景観計画をとしていただきたいものです。