もうひとつの関ヶ原

もうひとつの関ヶ原となった長谷堂合戦近くの上山城

上山城からの蔵王の景色


年間平均視聴率で21%もの水準になっているNHK大河「天地人」。

原作:火坂雅志「天地人」、脚本:小松江里子、演出:内藤愼介、片岡敬司のバランスが絶妙で毎回、巧いドラマ作りに感心します。

直江兼続は知る人ぞ知る人物でしかも歴史上では敗者の側であまり評価されていなかったのですがわざわざNHKがこの作品に注目したと思われるのは恐らく次の3つかと。

1. 2004年に発生した新潟・中越地震震災復興へのサポート
2.2004-2006年前後のバブルに発生した利得第一主義的世相(ライブドア、村上ファンド、投資銀行主導バブル)に対する警鐘
3.地方重視⇒地方から見た史観

2006年に原作が出来上がっており、まさに格好の材料だったのでしょう。
「利家とまつ」⇒石川県、「功名が辻」⇒高知、静岡、「風林火山」⇒山梨、長野、「篤姫」⇒鹿児島と直近のNHK大河はまさに地方巡りです。

今回の選挙の争点でもありましたが地盤沈下する地方の振興策は何が良いのか?については明確なコンセンサスがないように思えます。
少なくともこのような大河ドラマは、最も確実な観光需要創出に結びつき地元にとっては恩恵大です。

さて、先週のエピソードは政権交代選挙特番前後にもかかわらず19%超と高い視聴率。

題名は「家康の陰謀」。
太閤亡き後の家康のマキャベリ顔負けの権謀術数を描いていました。
太閤秀吉の命日は8月18日(旧暦)で今までありとあらゆる映画・ドラマで映像化されています。

本能寺の変で斃された信長のケースは超劇的。
「天地人」では壮絶な爆破で大胆な映像演出でした。
さすがNHK、予算も技術もあります。

他方、天ぷらの食べ過ぎ?が原因と云われる胃癌がもとで当時としてはほぼ天寿を全うした面白くとも何ともない家康の場合と比べ、この秀吉の場合は演出上はバリエーションがあります。

そういう意味ではまさに脚本家、クリエーターの腕の見せ所。

今回のエピソードではなんと石田三成に茶を所望し、あの召抱えのシーン(最初はぬるま湯、次は少し熱め、最後は温度をあげてじっくり飲ませる茶)を再現して最期を迎えるという形に。
小刻みに震える手で茶を飲み、30年昔を想い返す秀吉と三成という設定で涙なくして見れないシーンに。

今までの太閤最期の演出としては最高の出来映えだったかもしれません。

笹野高史さんという俳優は、自称ワンシーン俳優ながら、ラーメン屋のおやじから火葬場の担当官、陸軍大臣、太閤と何を演じても器用そのもので、ぴったりハマりすぎで驚くほどの芸達者です。
今回の「天地人」の天下人秀吉役はまさに代表役柄になるでしょう。

「男はつらいよ」のワンシーン常連さんでしたが今では注目作品・大作にはなくてはならない存在に。

一方、頭のてっぺんにたんこぶ付という異様なメークアップで迫真演技の松方さんのいやらしい家康役も笑えるぐらい嫌味たっぷりでこれも又かつての二枚目ヤクザ俳優の新境地でしょう。
大坂城殿中でのまるで傍若無人のヤクザ並みの態度対三成・兼続の火花はまさにオトコ達のドラマでした。

さて、ドラマ「天地人」の流れは、太閤が頼みとする前田利家老人も亡くなり、石田三成&直江兼続vs徳川家康と、「義」対「慾」の形が整っていき、終盤の「関ヶ原」と「もうひとつの関ヶ原」に向かいます。

火坂さんの作品以前では故司馬遼太郎氏作の「関ヶ原」が諸大名が右往左往するオムニバス挿話が多く面白いのですが直江兼続のことも十分語られていますのでこちらも一読の価値大です。

写真はそんな歴史の一大スポットであることを感じさせない上杉 vs 徳川方の激戦地、上山城の足湯で主になっている感じのニャンコ。
故隆慶一郎氏作の歴史小説「一夢庵風流記」を原作とした、原哲夫さんの歴史漫画の主人公である前田慶次が直江軍側で活躍した場でもあります。

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