東塔復興の悲願成就を!


東大寺の晋山式で「東塔復興の悲願成就を誓う」との伝奉がなされたとのこと。
素晴らしい決断です。
それなりの期間も費用もかかりますが過去から行われてきた復興の歴史を考えるとまさに時期にかなった取り組みだと思います。
よくぞ決断されました。
祈りの仏都としてその中心的存在である東大寺に塔が無いのはまことに嘆かわしいことでやっとオリジナルの姿を復興できるならこれこそ原点回帰でしょう。
世界情勢も国内政治も社会も混迷の時代ですがこういう時代だからこそ必要な取り組みでしょう。

以下、奈良新聞からの引用です。

北河原東大寺別当が晋山式2010年5月28日 奈良新聞
http://www.nara-np.co.jp/20100528103712.html
http://www.bukkyo-times.co.jp/14c076bf68b429.html
「奈良市の東大寺で27日、5月1日付で第220世別当(住職)に就任した北河原公敬師(67)の晋山式が営まれた。大仏殿の須弥壇に上がった北河原師は「東塔復興の悲願成就を誓う」と伝燈奉告文を読み上げた。

 南都諸大寺の僧侶のほか、山東昭子・参院副議長や荒井正吾知事、奈良新聞社の甘利治夫代表取締役ら約800人が参列。南大門から輿(こし)で参道を進んだ北河原師は、中門で式衆と合流して大仏殿に向かった。

 散華の後、本尊の大仏に向かって伝燈奉告文を読み上げ、「テロの殺りくと報復の連鎖、民族宗教の争いが収まることがない」と世情を憂い、大仏造立を発願した聖武天皇の心で人々の幸せを祈ることを誓…」

さて華厳の極みとしての東塔復興ですが副次的効果も計り知れないものがあると思います。

1.景観
七重塔はおそらく高さは東寺や興福寺塔のほぼ倍の100m。

奈良の景観が一変することでしょう。
といっても奈良時代からの歴史でみればさほど古くない室町時代まで続いていた景観ですが。
(明治時代は最近、という印象で江戸時代などは古くはない、という感覚でしょうか。)

市内のいたるところから仰ぎ見ることができ、市民や遠方からの観光客の気持ちとしてやはり「奈良は祈りの空間都市」でありかつ「類まれな古都歴史景観が大事」であることに気付くことでしょう。

Visit Japanでは常に観光ガイドの表紙を飾るような奈良の景観・眺望写真・絵ができることになり、世界中からも再認識されることでしょう。

また都市景観政策上もあらためて、眺望・景観がもたらす社会的、経済的意義が再認識されることでしょう。

若草山や春日山を背景に巨大な大仏殿や興福寺塔と並び建つ東大寺の塔は、類まれな美景になるかと。
タテと奥行きがある緑と木造建築のランドスケープほど心地よい景色はありません。

2.エコロジー
そして木造による再建であることから森や木のサイクルをきちんと進めるというエコ・自然維持の観点も重要かと思います。

間伐、伐採が減り、山の価値が急激に失われつつある現代日本で、あらためて木造建造物に取り組むというのは真のエコの観点から意義深いことでしょう。

3.技術継承
木造建造物は維持するだけでなく復興、新築しないことにはその匠の技術は後世に伝えることはできません。
幸い、平城京大極殿が完成し、次は興福寺中金堂の復興建築がはじまりますが、こういった古代木造建築を造り直すという匠の技が東塔復興建築でうまく継承さることでしょう。

東大寺東塔の次に是非復興に取り組んでもらいたいのは元興寺五重塔と春日大社五重塔なのですが。。。

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