東大寺七重塔の比較対照

 英国博覧会で展示された東大寺七重塔ひながた
 平山郁夫画伯による奈良時代大仏殿の絵
 古代の大塔は色々あったのですがやはり東大寺塔は屈指の規模だったようです。
 この慶州皇龍寺塔も規模が壮大で東大寺塔と比較してみると興味深いです。

 対して日本の塔は軒の出が長く、やはり同じアジアでも塔の姿は大きく異なったようです。
建物立面で見れば興福寺塔などは軒の出:建物立面横幅=1:3ぐらいの印象ですが大陸・半島系ともなると1:7から1:10はあるでしょうか。
八角塔で有名な応県木塔もまた日本の塔と異なり軒の出が短く、日本人からすればやや奇異に映るかもしれません。容積が大きく見え、迫力があり例えば江戸時代の名古屋城などにも相通ずるものがあるかもしれません。


石塔構造まで含めると北魏永寧寺が古代最大級の塔であったようですがそれでも東大寺塔は世界的にみて高さ、規模、美観バランスで群を抜いていたことは確かです。
絶妙の逓減と高さ、立ち姿の観点で屈指の芸術的建造物だったのでしょう。
もっともこじんまりした薬師寺三重塔の絶妙な美しさも捨てがたく、大和の塔はこの多種多様さが魅力のポイントかもしれません。

またTetsudaさん引用の通り、興福寺塔もまた格調の高さ、天平時代以来続いている重みを感じさせる独特の雰囲気があり奈良の景色では外すことができません。
故司馬遼太郎先生の指摘(「街道をゆく24巻 奈良・近江散歩」)にはうなずいてしまいます。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/ae2941ca8ddf8ead4ce9ffbe2c593e65
いずれにせよ、薬師寺伽藍復興、唐招提寺金堂解体復元、平城京大極殿復興、興福寺中金堂復元と続く古都奈良の復元の流れで待たれるのは東大寺七重塔復興でしょう。

東京にはスカイツリーがあり、大阪には大阪城天守閣があり、名古屋に名古屋城天守閣があるように古都奈良のシンボルとしての究極は東大寺七重塔です。

奈良の歴史では決して古くない室町時代まで聳えていたのですから現在の塔がない東大寺の姿の方が不自然といえば不自然かもしれません。
東方に春日奥山、大和青垣の緑の屏風を背景にした七重塔はさぞかし美しい佇まいだろうと思います。
単なる歴史観光都市としてでなく、祈りの心の観点からも、又、日本独自の文化発展を見据える観点からも、奈良はやはり本来の塔のある姿でなければなりません。
 

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